モーガン・ハウセル著「サイコロジー・オブ・マネー」は、現在のパーソナルファイナンス分野において重要な書籍として広く認識されている書籍です。多くの言語に翻訳されているそうで、肯定的な評価を得ています。
成功の核心には、金融知識や専門性よりも、個人の心理や行動様式が経済的成功を左右するという中心的な主張があるのが本書の特徴で、本書は複雑な金融概念を難解な専門用語ではなく、具体的なエピソードやストーリーテリングを通じて解説することで、幅広い層にとって読みやすく理解すやすい内容となってます。
この書籍の主要な教訓は、長期的な視点の重要性、複利の力、貯蓄(特に目的のない貯蓄)の価値、見栄のための消費の危険性、そしてお金がもたらす最大の価値としての「自由」と「時間のコントロール」の認識があります。また、リスク、不確実性、運の役割を認め、「誤りの余地」を持つことの重要性や、「十分」を知るという概念も強調されています。
PR
心理と行動の優位性
この書籍の主張は、経済的な成功は知性や学歴、専門知識といった「ハードスキル」よりも個人の行動様式や心理状態、すなわち「ソフトスキル」によって大きく左右されるという点にあります。著者は、「何をすべきかを知っていること」と「実際にその行動を取ること」は全く別物であると指摘し 、このソフトスキルこそが「サイコロジー・オブ・マネー」であると定義しています。
長期的視点、忍耐、複利
長期的な視点を持つことの重要性を強調しています。特に、複利の効果は、直感的には理解しにくいほど強力であり、時間をかけることで莫大な富を生み出す可能性があると説いています。
複利の恩恵を最大限に享受するための鍵は「時間」です。ウォーレン・バフェットのような偉大な投資家の成功も、卓越した投資スキルだけでなく、非常に若い頃から投資を始め、数十年にわたり市場に留まり続けたこと、すなわち時間を味方につけたことが大きな要因であるとしています。
優れた投資とは、必ずしも一攫千金を狙うことではなく、むしろ「そこそこのリターン」を着実に、長期間にわたって積み重ねることであるとしています。そのためには、市場の変動に一喜一憂せず、衝動的な行動を避け、忍耐強く投資を続ける姿勢が不可欠となる。市場から退場せず、「生き残り続ける(サバイバル)」こと自体が、最も重要な戦略の一つであると述べています。
「富」と「裕福さ」:貯蓄とライフスタイル
真の富とは、目に見える消費ではなく、使われずに蓄積された資産、すなわち将来の選択肢や柔軟性を担保するものである。これは、高級車や豪邸といった、しばしば「裕福さ」の象徴とされるものとは異なる概念。
他人からの称賛や尊敬を得るために高級品を購入する行為(見栄のための消費)は、実際には真の富を減少させる行為であると指摘しています。いわゆる「車に乗る男のパラドックス」として説明されるように、人々は高価な物そのものに感嘆することはあっても、必ずしもその所有者を尊敬するわけではない。見栄によって尊敬を得ようとする試みは、効果が薄いばかりか、富の蓄積を妨げる。
富を築く上での基盤となるのは「貯蓄」である。貯蓄は、収入を増やすことや高いリターンを狙うことよりも、個人がコントロールしやすい要素であり、その重要性は強調されています。貯蓄を「収入からエゴ(見栄や欲望)を差し引いたもの」と定義し 、特定の目的がない場合でも貯蓄すること(目的のない貯金)を推奨しています。なぜなら、予期せぬ出来事への備えとなり、将来の選択肢と柔軟性を生み出すからです。高い収入や投資リターンよりも、高い「貯蓄率」を維持することの方が、富の形成においてはより重要であるとされています。
究極の価値:自由、コントロール、そして柔軟性
お金がもたらす最も価値あるものは、物質的な豊かさや贅沢品そのものではない。それは、「自由」、すなわち自分の時間と人生を自らの意思でコントロールできることである。これは、幸福度を高める普遍的な要素として位置づけられている。
自由とコントロールを獲得するための手段が、前述の「貯蓄」です。特に目的のない貯蓄であっても、それが積み重なることで、予期せぬ事態(失業、病気、家族の介護など)に直面した際のセーフティネットとなり、精神的な余裕(安心感)をもたらす。さらに、キャリアチェンジの機会をうかがったり、より良い投資機会を待ったりするための「柔軟性」を与えてくれる。貯蓄を通じて、私たちは他者にコントロールされていたかもしれない自分の未来を少しずつ「買い戻している」とも表現できる。
リスク、不確実性、運、そしてテールイベントの航海
未来は本質的に予測不可能です。経済的な結果はスキルや努力だけでなく、「運」と「リスク」というコントロール不能な要因によっても大きく左右されることをこの書籍では認めています。これらの要因を正確に見極めることは困難ですが、その存在を認識することが重要です。過去のデータは参考にはなるが、未来を正確に予測する地図にはなり得ない。
リスクに対する捉え方も重要である。市場の変動性や一時的な損失を「罰金」と捉えるのではなく、長期的なリターンを得るために支払うべき「入場料」と考えるべきだと提案されている。適切に管理されたリスクは、時間の経過とともにリターンを生み出す可能性があるため、リスクを完全に避けるのではなく、理解し受け入れる姿勢が求められる。
おわりに
この書籍は内容も分かりやすく書かれている分、初心者〜中級者に向いている本のように感じました。データで論理的に書いているというよりは心構えを提示していると感じました。
そのため、これまで投資関連の書籍を読んできた人にとっては知っている内容ばかりで物足りなさが残るかもしれません。具体的な投資戦略やテクニカルな内容はないので、それらの内容を求めていない人が読んだ方が良いと思います。
金融の基礎をしっかり固めたい人には最適な書籍です。
PR


コメント